■区分所有法試案意見 (昭和57年10月 青山アパート建替準備組合)
「首題の件について、われわれは早期立方の成立を希望する立場から、われわれの実情の概略を説明申し上げて窮状を訴えたく陳情いたします。当青山アパートは(138戸142世帯)渋谷区神宮前4丁目12番に所在、築後60年老朽化がすゝみ且つ戦災の洗礼をうけて外壁の風化も甚しく、雨水の浸潤、コンクリート塊の落下、諸設備の老化等々住民はその都度応急修理で口塗しつゝ不安な想いで生活しています。元来青山アパートは、一戸当り床面積は10坪内外とせまく、浴場設備もなく近代生活に機能せず、又環境上からも周辺の再開発による美観の進展とは著しい不均衡な状態でスラム化しています。そのために住みたくても住めず他に住戸を求めて住んでいるので空家が現在20数戸もあります。
区の建築公害部からは危険建築物としてもご注意をうけたり、渋谷消防署からも文書による注意がされました。防犯上からも対策を急ぐべき実情であります。
昭和50年度青山アパート居住者組合総会は遂に「住宅対策委員会」の設置を採択しました。住宅対策委員会は各館から2名計20名の委員を選出、4ケ年にわたり43回の会議、討議を重ね、学者、専門家、行政、法律、資金等々あらゆる角度から調査、研究をつくしその結果は都度全員に報告、意見を求めて、大修理を施工すべきか、建替にすゝむべきか二者択一について全員のアンケートを求めた結果大多数即ち90%が建替すべしとの結論に達しました。
昭和54年4月「住宅対策委員会」は改組され青山アパート建替準備組合が発足し創立総会となった。組合の目的は勿論「青山アパートの建替」であり、その基本的な方針は「和」を第一に話合で信頼による「全員の合意」により建替を推進することでありました。そのためには、
1.住民の住民による住民のための再開発を原則とする。
2.全権利者の合意による民主的最大公約数を求め公平な権利、義務を分配する。
3.企画の基準は高令、病弱、経済的弱者におく。
4.信頼できるデベロッパーの協力より全員が安心して参加できるようにする。
5.和による信頼を基本とした団結、
を基本としてすべての作業をすゝめました。各理事は奉仕の誠意と熱意をもって、組合創設以来35回の理事会議を経て、その都度全員に事情を詳細に報告し意見を、理解を求めて、大体の作業は完了に近い状況であります。各理事の方々の献身には頭がさがる思いで感謝しています。
一方建替に理解されない約10余名の方に対しては、各理事が手分けして戸別訪問し、たびたび話合いをすすめましたが未だに理解いたゞけず、反対の理由も明らかでありません。現状では対策もなく困却の極みです。只々誠意をつくして話合う外ないと反省の状態ですが理事会の議論では、「民主的な多数決原理」が何らかの形で援用可能にならないかとの何回となく議題となりました。当然のことと考えます。
現在の住宅問題を考える時、一戸建は別として100万戸以上のマンションは、日々改築期が近づきつゝあります。現行法のように一人でも反対すると建替不可能であるならば大きい社会問題にならないか。個人の所有権重視は当然でありますが、共同生活下公共の利益を考える時ある程度の制約も已むを得ないのではないか。この場合相当な対価補償をもって報いるのは当然であると信じます。
現行マンション法、区分所有法の改正について御検討中との情報に接して既に久しいものでありますが、本年に入って進捗していることを伺い、心強く存じています。貴省におかれては既に改正要綱試案を発表されました。われわれも昨年来新聞、テレビを通じて、この趣旨に全面的に歓迎すると発表してまいりましたし、早急に立法化され施行されることを心から願うものであります。立法についてはいろいろな議論や面倒な手続きもあって容易ではないことゝ拝察いたします。しかし現行の一人でも反対者ある場合は建替不可能であることは少数暴力以外の何物でもないと信じます。
われわれは冷厳な法によってのみすべてと対決する考えはありません。徳義の条里による話合いを第一と存じますが、社会秩序という高所から本件改正案は早急に立法されることを心から望み茲に陳述いたします。
何卒充分なご詮義賜わり度、お願い申上げる次第でございます」