■20020503 朝刊23面(家庭覧)
会えるうちに「あの場所」へ

 「改革」の世に、効率の悪いものは、どうも旗色が悪い。私たちを見守り、楽しませてくれたものが、相次ぎ姿を消していく。大型連休も後半。向こう一年に「見納め」を迎えそうな場所を紹介する。

東京・同潤会アパート
都市景観考えさせた

 「なくなっちゃうって、ほんとうですか?」東京・表参道。3月、ケヤキ並木に面した出窓に、看板が掛かった。75年の歳月を重ねた同潤会青山アパート。その一角でアパートの写真展が開かれ、6日間で500人以上が訪れた。

 「これほどの人が思いを寄せているとは」と、企画した専門学校生田中元子さん(26)と大学院生大西正紀さん(24)。ネット上で署名を集めるなど、2年前から保存を訴えてきた。

 同潤会アパートは関東大震災からの復興のため造られた。鉄筋コンクリートの集合住宅の草分けだ。16カ所中、残るのは半数以下。青山では十数年前からブティックなどが入り、おしゃれな名所となっていた。

 森ビルを中心に、建築家安藤忠雄氏設計の再開発計画が進む。解体は来年早々にも始まる見通しだ。

 「残せないのは敗北では?」田中さんらは保存運動を紹介した席で、指摘を受けた。が、パネリストの一言で吹っ切れた。「景観について考える機会を設けることこそ価値がある」

 写真展では、ビルの解体と新築が交錯する東京の風景を自ら撮影して上映した。「地権者でも開発業者でもない『第三者』が声をあげるきっかけは大切にしたかった」

 ※その他に「千葉・ザウス」「岩手・橋上市場」「大阪・エキスポタワー」がとりあげられる。