■雑誌「住宅建築2000年11月号」より

 同潤会アパートの再開発情報がケンチクラブ内で流れ、その後のメール交換のなかで、保存を願う個人が意外と多数居ることが明らかになった。その後、建築家や建築学科学生はもちろん、ゲームデザイナー、CGデザイナー、編集者、ライター、TVディレクター、写真家、一介の主婦、予備校生、フリーターなど多様なメンバーが集まり、Do+のかたちを成している。

 ここで同潤会そのものについて簡単に触れてみたい。同潤会は、関東大震災復興の為、スラムの解消と災害に強い不燃構造の住居を実現するために作られた組織である。日本初の鉄筋コンクリート造集合住宅に挑戦、現代に通用する集合住宅のシステムを作り上げた。同時にそれは、都会に立地し且つ住みやすい環境を持ち合わせた新しいライフスタイル、集合住宅の提案でもあった。戦争の勃発、また当時の政府の意向と噛み合わず定着を観なかったのだが、件のシステムを昭和初期に提示し得たことには敬意に値するべきものかもしれない。

 現在、表参道沿いの青山アパートの敷地に関しては森ビルが再開発の事業主体となり、建築家安藤忠雄氏が担当建築家として指名され、その設計に携わっている。隣接する神宮前小学校と一体化した開発に加え、現存するアパート群のうち6号館のみを資料館として保存する提案が公表されている。私は青山アパートを、あの通りを通る多数の人が視覚的に共有している建物と考えている。建築史的に記録すれば建物の歴史的価値を語るには十分である、という方もいらっしゃるだろう。しかし、ある日突然都市の景観が変えられてしまうことに哀しさがないだろうか。現在、まちをつくっているモノは住む人々の手でもこころでも無いのだ。

 そう、実はDo+はその問題意識を、単純に青山アパート再開発問題のみに置いてはいない。地域住民と表参道を通行する人々のこころを汲んでみたい。つまり単純な反対運動ではなく、計画に絡む総ての人々が対話出来る場、全員で楽しくまちづくりを考えていける場を構築していきたいと思う。インターネットに発した組織であることのメリットは十分に活かしつつ、更に現実の都市に働きかけ、貢献していきたい。現実都市の巨大さに呑まれず対峙したい。そういった想いのもと集い、日々活動する組織にできたら、と願っている。

 具体的には、行政、権利者、近隣住民、設計者、各分野の学識経験者が同じテーブルについて話し合える場を設けようと考えている。青山アパートが今後どのように開発されるかを検討し、各人が各々の立場から意見を述べ、再開発がスムーズに行なわれる為話し合う場である。そのために保存要望書を関係者にネットで集めた署名と声を届ける。さらに「まちづくりワークショップ」の運営。まちをどうつくっていきたいかというテーマに沿い、参加者が明確な地域像=ビジョンを持つことを目的としたワークショップを企画している。都市の景観が人々の手の届かない論理に従って構築されてきたこと、また構築されていこうとしていることに対し、参加者が自らの意見を表明する場としていきたいと思っている。青山アパート問題を契機として、今後、人々が自発的に自分の意思でまちづくりを行う流れをつくっていく。これからのまちをつくっていくのは経済的価値だけではなく、まちに住む人々自身の記憶と想いでもあることを忘れてはいけないのではないだろうか。

2000.11.01