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Hosoi: 写真家として、同潤会の魅力的なところとはどこにあると思いますか?
ハービー: そりゃもう、いっぱいありますよ。 窓枠のデザイン、手すり、青山にはないけれど、アーチ、これは西洋では『魔よけ』
らしいです。それから、表現主義と言われるのでしょうか、建築家じゃないので分か りませんが、こういう内装の意匠は70年前建てた当時、ものすごく色々な人がやった
そうですね。こういう表現主義、家の先の柱などはデザインの宝庫とも言えますね。 こういう窓にしても西に向かっていて、昔ここから富士山が見えたからこういうかっ
こしているのかなとか夢のある想像が出来るんですね。(ふたたび代官山写真集を見 る) この窓は、ちょうど真西に向かってるんですよ。 また、このひし形の窓も変わった開き方するんですよ。
これは、今、ウチにあります。 これがさっきの富士山のかっこをした窓ですね。(写真をさす) こう言った楽しい要素はどちらかと言ったら代官山の方があるんですよね。
Hosoi: これが無くなっちゃったなんて、もったいないですよね。
ハービー:そうなんです。
Hosoi: 代官山はなくなってしまったけれど、 代官山は住民の方が残っていて70年間たった。そう言う歳の取り方をしたとおっしゃ
いましたが、僕は正直に言って代官山の方が残すための活動をしたら、モチベーショ ンが高かっただろうなって気がするんです。 人がいて、旧い建物の中に人が住んでいる状態で、都会の中にああいった形で生活で
きるということの貴重さがあったと思うんですよ。
ハービー: ありますよね。 いろいろな人が特に学生が、「ここ借りられないんですかね」って、部屋を探しに来 てましたね。 大抵が、芸大の建築学科の人だったり、建築に興味がある人が多かったようですが、
ヘアメイクさんとか、そう言った若い職業の人もずいぶん部屋を探していましたよ。
Nonnon: 今、都内に何ヶ所か残る同潤会の他の建物も同じ様にそれぞれの建物にアーティ スト系の若い人たちが入りたがっています。
ハービー: かつてのニューヨークのロフト、ロンドンで言えば、テムズ川の両端にあった でっかな倉庫群。昔、ロンドンは物資が、水路を通って全部陸揚げされていましたか
ら、それを一時保管する倉庫がいっぱいあったんですが、その後、交通手段が変わっ て、その倉庫が不要になって、全部空き家になり、その後、アーティストが住み着い
たんです。 僕もそこへ4〜5年住みました。大きな建物で天井が高く、スタジオにしたり、暗室に したりね。 同潤会がこのように好まれる一方で、億ションが売れているそうで、汐留に今度新し
いマンションが出来て、即日完売になりましたけれど、そう言ったものとは逆のベク トルで、旧いものの中で安心して自分の空間を創りたいという人々は、特にアーティ
スト系の人の中では多いのでしょうね。
Hosoi: そのような若いアーティスト達の気持ちがハービーさんもお分かりですか?
ハービー: あ〜、モチロン分かります、僕も一部屋借りられたら、借りたいですよ。
Nonnon: お金を出せば必ず入ることが出来る、画一的なものではなく、ここにしかないも のって言うか、また、この時間をかけて初めて得る事が出来るものが人を引きつける
のかもしれませんね。
ハービー: そうですね。 便利さを差し置いてもそれを自分のものにしたいと。 そこにいると、心がピュアになったり、クリエイティブになったりするんじゃないで
しょうか?
Hosoi: (ハービーさんに)お子さんがいらっしゃいますが、子供にとってあのような空 間をどう思いますか。
ハービー: 良いと思います。 春も秋も同じ様な鉄筋コンクリートの、しかも空調が効いた中にいるより、木々が生 え、四季をいきいきと感じる事が出来る…、外に出れば坂があって冬になればスキー
が出来、春になれば桜の花が真ん前に咲き、新緑が萌え、秋には黄色の銀杏が散る、 そしてたき火をしたり…。子供にはたいへん良いですよね。
Nonnon: 今、都市では望めないな位の贅沢な感覚ですよね。それが子供に与えられた ら、すばらしいですよね。 細:現在では、独身の人たちは、都市に近いといえば、何とかして高円寺辺りに住ん
だりもできますが、歳をとったり、子供が出来たり、家族もちになったら郊外に行 く…そういう選択肢しか無いわけじゃないですか。 それがとっても残念です。子供がいても、家族がいても、潤いがあって、都会にも住
めるという姿が本当だと思うんですけど。
ハービー: まあ、都会でこれだけの人口が多くなって、土地が無くて上に延ばすしかなく て、そうなると建ぺい率を、め一杯建てて、植物なんかもどんどん押しやって…。
その一方でビルの屋上に緑を生やそうなどという石原都知事のお考えもあるそうです けど。
Nonnon: そうですね、屋上緑化とか壁面緑化とかありますね。
ハービー: ま、そう言うので少しでも自然を失ったのをばん回できたら良いですけど、青山 アパートの木、ミカンみたいなのが成っていたり、壁に太陽が当たって、木漏れ日っ
ていうか、葉っぱの影が動くのを見ているだけでも心が和みますね。
Hara: ハービーさんの子供のころはどのような状況でしたか?
ハービー: 僕は、大田区の馬込とか、池上とかのあたりなんですけど、もともと、自然はた くさんあった地域で、今は小さなアパートばっかり建っちゃって、無残なんですけ
ど。当時は小川があったり、おたまじゃくしがいたり、赤とんぼが飛んだり、富士山 が見えたり、ウチの家の庭に木に上ると東京湾が見えたり、芝生山って言うきれいな
丘が、通学路にあったんですけど、学校から帰ると、ランドセルほっぽって、その上 にどかーんと大の字に寝て…。そうすると、雲と青空しか見えなくて、10分ぐらいの
間、トリップ的に宇宙と自分と地球とその3つしか感じられなくなって、地球の上に 僕がぽつんといて宇宙があると、小学校2,3年生のころ自分の存在感の小ささとか、
この世に生きている喜びとか感じました。
Hara: 今の都市の中で暮らしていて、感覚的にはどのようなことを感じて生活されてい ますか?
ハービー: 大地への方向性はないですね。 細々(こまごま)としちゃいますね。 自然を感じつつというものはなくて、路地になんか面白いものはあるかの方に目が
行ったり、人々だけを見るようになったとか。 広い空を心ゆくまでトリップするまで見るなどということは無くなってしまいまし た。
Nonnon: 空は、…切り取られた部分の空になってしまいましたね。
Hosoi: 建築では、僕は専門ではないんですが、近代化の未来像とでも言うものが19世紀 末から始まっていて、そして、日本ではずっと、それが政治経済構造に組み込まれてい
て、今だに続いている…、そんな気がするんです。 昔の人が夢をかたった結果が今の都市なのかもしれないけれども、それが結果としてどういう ことになっているのか、それに気付いている人もいれば、気付いていない人もいない
というのが今の日本の情況なのか知れませんね。 ここの窓からも恵比寿のガーデンプレイスが建っているが見えるのですが、この 様な情況って日本人にとってどうなんでしょうね。
ハービー: 気がつく人もいるし、気がつかない人、これが当り前だと思っている人もいるで しょう。 我々は同潤会というのを少しでも知っているし、また、「いなか」っていうもの
がある人は、田舎の広い風景とか海とか山を知っているから比較できる。 僕も東京出身だけど40年前のその頃の東京の広さを知っている。 ところが、今の子供たちは、こういうところで育って、公園もなくて、コンクリート
の中で過ごす事が、あたりまえで、そうなったら…、5感のうちの1つや2つは鈍感 になって成長してしまいますよね。
Nonnon: 残念ですよね。
ハービー: ダイブ、残念です。
Nonnon: 科学や技術が発達して来ているはずなのに矛盾ですね。 同潤会アパートはのちの集合住宅のモデルになったわけですが、今みると、豊かさと
か、オモシロサって言うのは、窓の形一つとっても今の集合住宅のほうが同潤会よ り、ずっと豊かだった気がしますね。
ハービー: 集合住宅の新しい提案として、同潤会が作られたけど、今の集合住宅、つまり、 高層マンションがそれの良いものを引き継いだのかというと、土地の少なさもあっ
て、自然を融合させることがまだ、出来てないということでしょう。
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